■花粉症薬はドーピングになる?
「花粉症の薬を飲んでも、ドーピング検査は大丈夫ですか?」
スポーツに取り組む患者さんから、このようなご相談をいただくことがあります。
結論からいうと、一般的な抗ヒスタミン薬や点鼻薬の多くは使用できます。
しかし、花粉症や鼻づまりに使われる薬の一部には、競技会時に禁止される成分が含まれているため注意が必要です。
アンチ・ドーピングとは、単に禁止薬物の使用を取り締まるものではありません。アスリートの健康を守り、公平な競技環境とスポーツの価値を守るための取り組みです。たとえ治療目的であっても、禁止物質が体内から検出されれば、規則違反となる可能性があります。
そのため、使用する薬についてアスリート自身が責任を持って確認することが大切です。
■特に注意したい「エフェドリン類」
花粉症薬や総合感冒薬、鼻づまりを改善する市販薬の一部には、血管を収縮させて鼻の通りをよくする「プソイドエフェドリン」が含まれています。
世界アンチ・ドーピング機構(WADA)は、アスリートに対して競技会の少なくとも24時間前までに、プソイドエフェドリンを含む内服薬の使用を中止するよう注意を促しています。
また、漢方薬の麻黄に含まれるエフェドリンや気管支を広げるメチルエフェドリンなどの成分にも注意が必要です。処方薬だけでなく、市販の鼻炎薬や風邪薬にも含まれることがあるため、「ドラッグストアで購入した薬だから大丈夫」というのは大変危険です。
■点鼻ステロイド薬は使用できる?
花粉症治療でよく使用するステロイド点鼻薬は、承認された用量と治療目的の範囲内で鼻腔内に使用する場合、原則として禁止されていません。一方、糖質コルチコイドの内服、注射、経直腸での使用は競技会時に禁止されます。同じ成分でも、使用方法によって取り扱いが異なる点に注意が必要です。
■耳鼻咽喉科専門医として大切にしている処方
当院では、アスリートの花粉症治療において、禁止物質の有無だけでなく、眠気や集中力の低下、口の渇きなど、競技パフォーマンスへの影響にも配慮しています。
症状の程度を確認したうえで、眠気の出にくい抗ヒスタミン薬や点鼻薬などを組み合わせ、一人ひとりに適した治療をご提案します。
薬だけに頼らず、花粉を避ける工夫や鼻洗浄なども取り入れながら、症状を抑えて競技に集中できる状態を目指します。
大会を控えている方や、現在の花粉症薬に不安がある方は、受診時に「競技に参加している」「ドーピング検査の対象になる可能性がある」とお伝えください。
安全性と競技パフォーマンスの両方を考えた花粉症治療を一緒に検討しましょう。
わたなべ耳鼻咽喉科 ブログ
